コルカタ駐在日誌

駄目リーマンがインドのコルカタに赴任した。日々の生活を綴り、たまにリーマン社会の闇をえぐってみる。

銀行や携帯会社が、アーダール番号を申告してくださいと、毎度うるさく言ってきている。

2018年1月1日から、口座や回線が使えなくなりますよ、などと脅す。


アーダールとは、日本のマイナンバーのようなものか。

これまで免許証やIDやPANカードなど、いろいろな書類で身分証明をしていたのが、アーダール番号に統一されるとか。

一方、指紋や網膜などで生体認証するのがプライバシー侵害だと、裁判で係争中でもある。


銀行と通信会社がうるさく言ってきているということは、銀行口座と携帯回線とアーダールとを連携させ、治安維持とか国民のモニタリングにも利用するのかも。


外国人はアーダールの対象外だそうなので、ずっと放置していた。


だが最近、考えた。


外国人は対象外だと政府が言ったとしても、銀行や通信会社が、果たして納得するのか?

アーダールを申告していない契約者の分は、自国民外国人問わず、まとめて凍結するのでは?

政府の言う事だって、いつ突然変わるかわからない。

やっぱり取得しといたほうがよいのかな・・・


そう思うきっかけとなったのは、携帯SIMの新規申し込みをめぐって、某通信会社とケンカしたことだ。

とにかくアーダールがないと新規契約はできないの一点張り。

『外国人はアーダールの対象外。新規契約にはビザとパスポートと居住証明で済むはずだ』と説明しても、全く聞く耳を持たなかった。

もちろんカスタマーセンターへクレームを付けたが、改善するとは思えない。


銀行も通信会社も、末端のスタッフたちは、外国人のケースなどわからない。

彼らは顧客データにアーダールを入力せよと指示されているだけだ。

彼らの所属会社や上長たちも、外国人のケースまでは把握していないかもしれない。


最悪、来年1月1日に勝手にこちらの契約を止められたら?

抗議しても、まともな対応はしてもらえず、たらい回しされたら…?

一旦凍結された口座や回線を再開させるためには、膨大な書類と手続きと、半年〜一年もの時間がかかるのでは…

だってインドだから。


ガクガクブルブル。


外国人も申請はできるらしいので、とりあえずしておくことにした。

アーダール持ってても、邪魔にはならないだろう。



アーダール申請のためには、居住地区ごとに割り当てられたEnrolment Centerに出向かなければならない。

私が指定されたのは、空港近くのIndusInd Bank。

とりあえず身分証明5点セット

①パスポート

②ビザ

③居住証明

④PAN

⑤顔写真 

を持参した。


Induslnd Bankでの顛末は後で書くが、

申請について結論から言うと、

必要な書類は、居住証明、PAN、パスポート、ビザ。

申請手続きは、

1.担当者が、個人情報を政府のデータベースに入力

2.指紋と網膜をスキャン

3.申請IDの交付


1時間あれば終わる。


入力する情報は、居住証明やPANに記載された内容。

パスポートとビザは、本人確認。


交付された申請IDで、自分のアーダール発行状況をチェックできるとのこと。

アーダール登録が終わったら、携帯にSMSが来るらしい。

そこから政府のウェブサイトにアクセスし、仮カードをプリントアウト。

後日、カードが郵送されるそうだ。

(今これを書いている時点では、私のところにはSMSも来ていないので、伝聞)。




さてここからは、Induslnd Bankでの出来事。


Bankに着くと、奥の一室にムーディー勝山風の兄ちゃんが、ノートPCを前に座っていた。

彼が申請手続き担当だが、英語は通じない。

隣のデスクから、裕福なMr. オクレという感じのマネージャーが来て、私の身分証明セットをチェックし、

『追加であと5種類の書類が必要だよ(以下⑥〜⑩)。

明日また、11時~16時までの間に来てね』。


オクレがリストアップした追加書類とは、

⑥過去3ヶ月の銀行取引証明

⑦居住アパートの賃貸契約書

⑧社員証(日本語で書いてあってもOK)

⑨会社のPAN

⑩小切手帳


はぁ?そんなに必要?


まあ⑥⑦は、ありかもしれない。実際にここに住んで生活しているという証明に。

⑥は自分の口座がある銀行の窓口に言うと、すぐに発行してくれた。


インドで身分証明に⑧が要るって言われたのは初めてだ。

⑨は、勤務先が実在するかの確認か?  

まあ就労ビザでやってきた外国人だからね。仕方ないか。


でも⑩って、申請に必要あるのか?

たぶん無いと思う。

これまでの経験から、銀行員が小切手帳を持ってこいと言う時は、自分のところの金融商品を契約させようと企んでいる時だ。


とりあえず翌日、①~⑩を持って再訪。

用意した書類を、ムーディーがパラパラと確認した。


だが彼が実際に使ったのは、私の住所が書いてあった銀行の取引証明と、個人のPANカードだった。


ムーディーが広げているノートPCには、Web申請のページが出ていた。

彼が画面から入力している情報は、住所・名前・父親の名前・携帯番号。

これらがわかりさえすればいいのなら、公的に発行された居住証明を参照すればよいわけで、PANまで引っ張り出さなくてもいいと思うが。


ムーディーが入力している間に、IndusInd Bankの行員が入れ替わり立ち代り、物珍しげにやってくる。

彼ら全員が、私の銀行取引証明とPANとをしげしげと見ていた。



あー、そういうことね。


申請に必要と言っておいて、実は自分たちが見たかったようだ。

実存する企業に勤めていて、定収入あるかどうか。


やがてオクレとその仲間たちがやってきて、医療保険に入らないかと言い出した。


ほら来たやっぱり。


『保障額は上限5ラークルピー、どうだ高額だろう!』

100万円くらいでドヤ顔されてもね…

日本では1〜2カローレルピーくらいだよ。

『ノー、ウチの保険は、病院に行っても金は払わなくていいのだ!そういうのは日本には無いはずだ』

日本は、国民皆保険だもん。そういうのはインドには無いはずだ。

だからキミたち民間にやらせてるんでしょ。

カードにも付帯保険あるし、会社が海外旅行傷害保険かけてくれてるから、イラネ。


そんなやり取りを横に、ムーディーが特別な装置を取り出しPCに繋いだ。

まずは指紋を取る。

左の4本指を3回。

右の4本指を3回。

両手親指を3回。

スキャンのようなものに押し付け、PCがピピッと鳴る。


次に、昔の眼科の検査機器みたいなものを顔に付ける。

緑の点を見つめる。

ムーディーが手元の機器をカシャカシャさせ、2回ほど繰り返して終わり。


そのうちPC画面に申請IDが出てきたようで、

ムーディーが裏紙に数字を書いて手渡した。


手続きはこれで終了。

ムーディーは英語が話せないので、次の申請者の兄ちゃんが、IDのことと今後の流れを説明してくれた。

オクレたちは、私が保険加入を断わるとどこかへ消えた。以降、行員たちは誰もムーディーのサポートはしなかった。


要するに、

住所と個人情報を証明する書類さえあれば、申請はできる。

担当者は、データ入力、指紋・網膜スキャンの操作のために存在している。

Induslnd Bankが指定してくる書類は、申請には必要ない。彼らの営業に使われるだけ。


以上。



インド政府に言いたい。

公的な申請手続きに、民間企業を噛ませないでくれるかな。

要りもしない書類を用意させられ、逃げられないよう申請手続き中に保険勧誘されるのって、迷惑なんだ。


インドには健康保険制度が無いから、Induslnd Bankが民間委託され、政府奨励で加入者集めたいのかもしれない。

それはわかる。

でもアーダールと保険は、別物だ。


Induslnd Bankよ、自分とこの保険加入に必要な書類を、さもアーダール申請に必要な書類みたいに言ってんじゃないよ。

あと、保険売りたいなら、商品説明はきっちりやれよ、理路整然とな。

『病院でカネは要らない』

『アポロ病院だけじゃなく、そこのチャーノック病院でもOK』

『お前にとってメリット大きい』

それだけを訛りのキッツい早口でまくし立てられても、わかるもんか。

よくわからない物にカネを出す奴はあまりいないので、こんな営業じゃあ契約は取れにくいと思うよ。


以上。


2ヶ月ほど前。ディープ・イーストから久々にコルカタに戻ったときのこと。
メイドが今月限りで辞めますと言って来た。
私は特に驚かなかった。あ、そう、という感じ。
彼の仕事振りには満足していなかったからだ。
指示したことを忘れるのは日常茶飯事。
無断欠勤も数回あったので、総務を通じて厳しく言ってもらったばかりだった。

話を聞いていると、どうやらドケチのドイツ人社長と衝突したようだ。
彼は、ドイツ人社長とフランス人社長と私の所を、パートタイムで掛け持ちしている。
語学堪能ということで、普通のメイドよりもかなり高給取りだった。
ドイツ人社長は金に細かく規則に厳格なので、メイドをたびたび怒鳴りつけていたらしい。
そしてある日ついにヒートアップしたようで、『お前はクビだ!!』『わかったよ、辞めりゃいいんでしょ』のやり取りに発展したらしい。

メイドの最終勤務日。
今月は15日しか出勤してないので、給料は日払いで半月分支払えばいいのだが、退職金含め1か月分払うことにした。
だが、
『ええーっ!?それでは少なすぎますよ。ドイツとフランスからは2か月分もらったんですケド』
・・はぁ?

何を欲張りなこと言ってんだよ?
俺はここ2~3ヶ月は、ほとんどコルカタにいなかったんだが、給与は1か月分、普通に払ってたろ。キミは仕事しないで丸々もらえてたんだ。
休みも多めにあげてたよね?
他の二人に比べたら、ウチがいちばん楽だったはず。
なのに何で同じ額を払わなければいけないのさ?

『だって4月からの昇給もなかったし、ボーナスも少なかったし・・』
他の二人のとこは、昇給もボーナスも無かったと聞いてるが? 
ボーナス多く欲しいなら、休まずに毎日来て、完璧に仕事しろよ。
休みたくさん、仕事は楽、ってのがいいんなら、給与はそれなりだろ。 
楽してお金たくさんほしいとか、甘えんなよ。

仕事なめんな、と喉まで出かかったが、それはかろうじて飲み込んだ。

そういえば、思い出した。
働きだして2ヶ月も経たないうちに、カナダへ出稼ぎに行きたいので労働ビザの保証人になってくれと言ってきたことがあった。断ったけど。
私の留守中、フランス人社長に呼ばれたからと、勝手に私の社用車を使おうとしたこともあった。総務に怒られて未遂に終わったけど。  
他にもある。
インドの包丁は切れ味が鈍い、日本の包丁が欲しいと頼まれたので、一時帰国のときに買ってきた。なまくら包丁でケガしないように。
腰が痛いと言うので、サロンパスもあげた。仕事に差し支えたら困る。
雇用者として労災にも気を配ったつもりであり、そこは他の社長二人よりも人道的に扱っていたと思う。

いろいろと思い出すうちに、怒りがこみ上げてきた。
まぁ一言で言うと、なめられてたんだな。

どうやら扱いを間違えたようだ。
二人の社長みたいに、彼のクズっぷりを想定し、家畜扱いでコキ使うべきだったのかもしれない。
そこはさすが欧米人。植民地経営とはそういうことか。
次回の教訓にしたい・・が、日本人には難しいだろう。
性善説にとらわれているし、クズでも教育すれば変わると信じているところもある。
どうしても相手を人間と見てしまう。


総務はすぐに、新しいメイドを連れてきた。
彼の履歴書を見ると、
ウェスティンとノボテルで、通算12年ほど働いている。
働きながら、秘書や執事のような資格を取っている。
お試しで仕事させてみたら、かなり出来る奴だった。
旧メイドとは比べ物にならない。
総務には、彼を本採用してもいいと告げた。

だが釘を刺された。
『おそらく彼は本採用になると思います。二人の社長もOKしている。
でも様子を見てたほうがいいですよ。試用期間なので、今だけ一生懸命やってるのかもしれない。
旧メイドもそうだったでしょ?あいつも最初は真面目だったけど、辞める前は、もうめちゃくちゃだった。
何と言うのかな…外国の人には言いにくいのですが、まあ…所詮、そういうクラスの人間…というんですかね』 


旧メイドも新メイドも、SCだった。
旧メイドは、おそらく特別枠で大学の経済学部まで卒業していたが、企業で働いた経験が無い。
雇われて給料をもらう緊張感に欠けていたのは、そのせいか。
新メイドみたいに、早々に手に職を付けて実務経験を積んだほうがマシなのか。

日本の場合を思い出した。
私の周りには、優秀な技術者や職人がたくさんいた。みんな10代のうちから手に職を付け、経験を積んできた人々。
でもほんの何人かは、ふとしたところで、やっぱり生育環境がね・・とか、やっぱり受けてきた教育レベルがね・・と言いたくなるような瞬間もあった。
インドなら、そのあたりがもっと顕著に出てくるのだろうか?

私は、実務能力があって真面目で人間性も良いなら、出自・学歴問わないスタンスだし、バックグラウンドもあまり意識しない。
しかし、根強い身分制度と性悪説とに満ちたこの世界で、それがどこまで通用するか。
今後に乞うご期待。



コルカタはドゥルガ・プージャに入った。
街の中を、ドゥルガ女神の像を載せたトラックが行き交う。
大きなスピーカーを設置し、音楽を大音量で鳴らしながら踊る人々。
舞い上がる凧。
BBD Bag周辺は大渋滞。

本来なら、私は祭りの前夜から2週間ほど、一時帰国する予定だった。
ところがその直前、日本の国内営業部から魔の電話。
『大口顧客A社さんの役員さんたちが、インド視察に行かれる。そっちでアテンドしてよ』
えーと、ドゥルガ・プージャのど真ん中で、1週間ほど連休ですよ?本当にその期間で大丈夫ですか?
それと私、帰国するんですけどね・・
『お客様第一!! お客様が行きたいとおっしゃるなら、盆正月関係ないの!!!』
ガチャッ・ツーツーツー。

A社ご一行様のホテルや国内線チケットの手配など何もかも完了させ、
その後、自分が乗るはずだった帰国便の発着日を変更した。
10月前半の便はかなり混んでて、変更追加料金が高くなっていた。

日本往復便の変更が完了した5分後。
日本からコール。
『A社さん、やっぱりインド来るの12月に延期するって。お騒がせしてすまんね』

・・・orz

このタイミングの悪さは何だ?

というわけで、ドゥルガ・プージャの期間がぽっかり空いた。
この間、オフィスは閉鎖されるし、守衛も運転手も休むので、休日出勤さえできない。
アパートにじっとしているしかない。
そんなの嫌だ。
昼夜問わず騒々しいし、すぐ停電するし、ネットくらいしかやること無くて、気が滅入るから。

コルカタから出ようと思い、Make My Tripで検索してみたけど、航空券は軒並み高い。
インド国内旅行?特に行きたいところは思いつかない。
ケララとか遠くに行くと、航空券代金も宿泊費も、バンコク往復よりも高くなることがわかった。
ならバンコクにしよう。
静かに寝られるし、美味しいものが食べられるし、マッサージや温泉もある。
コストバリュー高い。
航空券とホテルをさっさと手配した。

バンコク行きの前日。
浮き浮きしながら荷物を詰めてたら、電話が鳴った。
ディープ・イーストの協力会社から。
『ペンディングになってたxx装置の試運転、来週やるから立会いに来てよ』
はぁ?
ドゥルガ・プージャの真っ最中でしょ?大丈夫?
てか、ずっと放っといて、何で今やるの?ホリデー明けにやればいいんじゃ?
『俺たちは連休でも仕事だし。試運転は納品先の技術部長がたった今、決めたんだ。逆らえないよ。よろしく』

・・・orz

今度はバンコク行きの航空券とホテルをキャンセルだ。
このキャンセル料と、日本帰国便の変更手数料と、合わせていったい幾らかかったのか…
計算するのをやめた。
空しくなるから。

前向きに考えよう。
女神様は仕事を作ってまで、私をインド国内に引き止めてくださったのだ。
その証拠に、ハウラー~ディープ・イースト往復の列車予約は、すぐにCNFされたではないか。
宿泊も、この界隈には稀な、酒が飲めて飯ウマなホテルが取れたし。
出張なので旅費と日当も出るし。
バンコクで沈没してるよりも、インドで仕事してたほうが精神衛生にも良いかな・・社畜思考だけど・・
ということで、ドゥルガ・プージャは休日出勤と相成った。

だが納品先に行ってみたら、試運転を決めた技術部長は、自分の言ったことを完全に忘れ、ゴアへバカンスに行った後だった。 

・・・ orz

彼の部下が監督代行することになったが、ただ今帰省中。
部下が戻ってくるまで数日間、ホテルにて待機となりましたとさ。 

女神様は、連休に働こうとしてた私のために、休みをくださったのですね。
女神様の粋な計らいに感謝を捧げ、乾杯。
Happy Durga Puja !


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